頭痛外来
頭痛外来
頭痛は身近な症状で、多くの方が経験されている一般的な症状の一つです。国際頭痛分類において一次性頭痛(いわゆる慢性頭痛)と二次性頭痛(いわゆる急性頭痛)に分類されます。一次性頭痛とは、頭蓋内に器質的疾患を伴わない頭痛のこと、二次性頭痛とは、頭蓋内に何らかの疾患があり、それが原因で起こる頭痛のことです。命の危険を伴う二次性頭痛(くも膜下出血など)の鑑別を早急に行う必要があります。また、一次性頭痛で慢性的に悩まされている方は、頭痛のない生活を目指すことで生活の質の向上を図る必要があります。
脳神経外科では、突発的な頭痛などに対して即日MRI検査と診察を行っております。二次性頭痛の早期診断と治療、一次性頭痛に対する診断と治療、さらに、生活の中で頭痛発生の引き金を引いている原因を一緒に紐解いていきます。
片頭痛は単純に『強い頭痛』というわけではなく、WHO(世界保健機関)の報告では『日常生活に支障をきたす疾患』の第3位に、神経疾患としては第2位に位置付けられているような、深刻な障害をもたらす慢性的な疾患です。日本では、片頭痛患者さんの約75%が日常生活に何らかの支障を感じていると報告されています。
これまで、NSAIDsやトリプタン系の急性期治療薬と様々な予防的薬剤を組み合わせた治療がなされてきました。昨今、片頭痛の病態に重要な役割を果たしているCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)に注目が集まり、CGRPと拮抗する薬剤の開発が進んでいます。1回/月~1回/3か月に注射し、CGRP自体もしくはCGRP受容体を阻害することで、CGRPにより誘発される『神経原性炎症のカスケード反応』を遮断することができ、片頭痛の予防を図るというものです。
2025年12月、片頭痛に対する経口CGRP受容体拮抗薬『ナルティーク(リメゲパント』がリリースされました。特筆すべき点は、経口薬であること、急性期治療薬と発症抑制薬(予防薬)の両方の用途(適応)があることです。また、血管収縮作用を伴わないことから、これまでトリプタン系薬剤(血管収縮させる性質)を使用できなかった心血管疾患リスクのある方にとって新しい選択肢となりました。
これまでCGRP関連治療薬を選択してこなかった方や従前の治療薬で満足していない方、月経関連片頭痛(通常の片頭痛よりも痛みが強く、持続時間が長く、薬が効きにくい)でお困りの方、薬物乱用頭痛(月に10日~15日以上鎮痛薬を内服し、3か月以上続いていている)でお困りの方は、ぜひ一度、この機会にご相談下さい。
一次性頭痛は、器質的疾患を伴わない頭痛のため、命に関わることがない点で心配はいりませんが、多くの場合慢性化して痛みを繰り返すことが多く、日常生活に支障をきたすことがあります。一次性頭痛は、主に「片頭痛」、「緊張性頭痛」、「群発頭痛」の3つに分けられます。
【片頭痛】
片頭痛は単純に『強い頭痛』というわけではなく、WHO(世界保健機関)の報告では『日常生活に支障をきたす疾患』の第3位に、神経疾患としては第2位に位置付けられており、深刻な障害をもたらす慢性的な疾患です。日本では、片頭痛患者さんの約75%が日常生活に何らかの支障を感じていると報告されています。
頭の片側もしくは両側が脈を打つようにズキンズキンと痛み、体を動かす(歩く・階段を上がるなど日常の動作で)と悪化します。光や音に敏感になり、暗い部屋で静かに安静にする必要があります。頭痛の持続時間は4~72時間に及び、その後自然に回復していきます。
片頭痛の発症メカニズムは、かつて『単に血管が広がるから痛む』という説から、現在では『三叉神経血管説』が主流となっています。脳が頭痛の引き金となる刺激を感知すると、三叉神経が異常な興奮状態に陥ります。三叉神経の興奮は、血管周囲の神経終末から血管拡張作用を持つCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)を放出します。放出されたCGRPは血管やその周囲組織にある『CGRP受容体』に結合し、①血管の拡張(拍動性の痛み)、②神経原性炎症(血管や三叉神経に強い炎症を惹起)により、さらに三叉神経を感作させ、いわゆる痛みの負のスパイラルが完成します。刺激を受け取った三叉神経はその信号を視床から大脳に伝えることで『激しい頭痛』として痛みを自覚します。
疫学的には、女性が男性に比べて3倍多く、30~40代でピークを迎え、更年期の50歳前後で症状が軽減することが多いです。月経周期に関連して周期的に頭痛が起きることや、妊娠中に軽減し、出産後に月経周期が再開すると同時に頭痛の周期も再開することから、女性ホルモンの変化に影響を受けているといえます。その他の誘因としては、睡眠サイクルの乱れ、光や音の刺激、空腹、気圧の変化、精神的・肉体的ストレス、過度な飲酒、そしてチラミンを含む食品(ワイン・チーズ・チョコレートなど)の摂取が考えられます。生活習慣を少し変えることで片頭痛の頻度や程度を軽減できる可能性があります。まずはご自身のトリガーを把握することから取り組んでみてはいかがでしょうか。
一方で、セルフケアだけでは改善が難しい場合があることも事実です。痛みが悪化している場合や変化している場合は、いつもの片頭痛ではない別の病気の可能性もあります。専門医の診察とMRI装置を用いた画像検査で、二次性頭痛をしっかりと否定しておくことが大事です。片頭痛発作を頓挫させる『急性期治療薬』や痛みの頻度や程度を改善する『予防薬』をご自身のライフスタイルに合わせて、医師の指導の下で適切に組み合わせることで、より快適な日常生活を取り戻すことが可能です。
【緊張型頭痛】
緊張型頭痛の症状は、頭の周囲をはち巻きでギュッと強く締め付けられたような痛みが続きます。後頸部の痛みや頭の重だるさ、ボーッとして思考力が低下するなど、慢性的でスッキリしない状態が特徴です。
日本人で最も頻度の高い頭痛であり、原因としては長時間のデスクワークやスマートフォン使用による姿勢の悪さが挙げられます。うつ向き姿勢が続くと、頭や首、肩の筋肉に大きな負荷がかかって血流が悪化し、筋肉の緊張や炎症を引き起こします。その他の誘因としては、精神的・肉体的ストレス、疲労、自律神経の乱れなどが考えられます。
首・肩こりを感じる前に、こまめなストレッチをすることで悪化を防ぐことができます。1時間仕事をしたら軽く体を動かすなど、習慣化してみましょう。また、ストレッチや入浴で筋肉の凝りをほぐすと血行が促進され、痛みの緩和が期待できます。
一方で、セルフケアをしても連日のように頑固な痛みで悩まされている方が多いのも事実です。鎮痛薬を頻繁に使いすぎると、脳が痛みに過敏になり、かえって頭痛が治りにくくなるケースもあります。また、後頭部周辺の痛みには、緊張型頭痛以外にも『椎骨動脈解離』や『後頭神経痛』といった疾患が隠れていることがあります。これらは痛む場所が似ていても、原因や治療法が全く異なります。特に椎骨動脈解離は命に関わることもあるため、一刻も早い診断と治療が必要です。自己判断で放置せず、まずは脳神経外科を受診し、MRI検査などで痛みの正体を正確に突き止めることが、安心への第一歩です。
【群発頭痛】
群発頭痛の症状は、頭部の血管拡張などが原因で、目の奥からこめかみにかけて「えぐられるような」激痛が走り、大人でも耐え難いほどの痛みに見舞われます。脳深部の視床下部(睡眠リズム、ホルモン分泌、自律神経の司令塔)の異常が発端となり、三叉神経や血管拡張が関わっていると考えられていますが、発症メカニズムは完全には解明されていません。発作はある一定期間(群発期)に集中的に起こり、その期間中は毎日激しい痛みを繰り返すのが特徴です。働き盛りの20~40歳代の男性に多く、女性の3~7倍に上ると言われています。群発期間中の飲酒・喫煙、急激な気圧の変化などが発作を誘発します。日常生活や仕事に甚大な支障をきたすため、専門医による適切なコントロールが極めて重要です。
二次性頭痛とは、脳や体に何らかの具体的な原因疾患があり、その症状の一つとして現れる頭痛のことです。いわゆる「頭痛持ちの頭痛(一次性頭痛)」とは異なり、生命に関わる深刻な病気が隠れている可能性があるため、迅速な診断が極めて重要です。
原因としては、くも膜下出血や脳出血、脳梗塞などの脳血管障害、脳腫瘍、脳炎、髄膜炎、頭部外傷などが挙げられます。これらは生命の危機に直結する可能性があり、一刻を争う判断が必要なため、単なる頭痛持ちの症状とは一線を画す「怖い頭痛」として警戒されているのです。
今までに経験したことがない強烈な頭の痛み(明らかにいつもと違う頭痛)、急性・突発性の頭痛、発熱、手足のしびれや麻痺を伴うような場合には二次性頭痛を疑って、直ちに脳神経外科などの専門医を受診してください。また数週間のうちに頭痛が悪化してくるようであれば、脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などの可能性もあるので、併せて注意が必要です。
頭痛は身近な病気です。身近にあるが故に『たいしたことない』と放置していませんか。最近はよい治療法もあり、投薬や対症療法で改善できることもあります。また二次性頭痛のように、大きな病気が潜んでいる可能性もありますので、頭痛外来などを早めに受診してみてはいかがでしょうか。
【レッドフラッグ:直ちに受診が必要な『危険な頭痛』のサイン】
頭痛の中には、放置すると命に関わったり、重大な後遺症を残したりする「二次性頭痛」が隠れていることがあります。これらを見分けるための緊急の警告信号が「レッドフラッグ」です。
以下の症状が一つでも当てはまる場合は、決して様子を見たり鎮痛薬で済ませたりせず、直ちに脳神経外科を受診してください。
1.突然発症した「かつてない激痛」
「バットで殴られたような」と表現されるような、一瞬にしてピークに達する激しい痛みです。くも膜下出血などの脳血管障害の可能性が高く、一刻を争います。
2.日ごとに悪化する頭痛
数週間から数ヶ月かけて、痛みの回数が増えたり、程度が強くなったりする場合です。脳腫瘍や慢性硬膜下血腫など、脳内の圧力が徐々に高まっているサインかもしれません。
3.麻痺やしびれ、言葉の異常を伴う
手足に力が入らない、半身がしびれる、言葉が出ない・ろれつが回らない、物が二重に見えるといった症状は、脳梗塞や脳出血が強く疑われます。
4.高熱や意識の混濁を伴う
激しい頭痛とともに高い熱が出たり、首の後ろが硬くなって曲がらなくなったり(項部硬直)、意識がぼんやりする場合は、髄膜炎や脳炎の危険があります。
5.50歳を過ぎて初めて現れた頭痛
これまで「頭痛持ち」ではなかった人が、50歳を超えてから初めて頭痛を経験するようになった場合、背景に重大な疾患が隠れているリスクが高まります。
【MRI検査の有用性:脳の健康を守り、「安心」をお届けするために】
頭痛でお悩みの方にとって、最も大きな不安は「この痛みは脳の病気ではないか?」ということではないでしょうか。当院では、最新のMRI装置を用いて、目に見えない脳の状態を詳細に確認し、客観的な指標に基づいた診断を行っています。
1.「怖い頭痛」の確実な除外
MRIは、X線を使用するCT検査に比べ、脳の細部や血管の状態をより鮮明に描き出すことができます。
2.痛みの「正体」を突き止める
「いつもの片頭痛」だと思っていても、実は血管が異常をきたしていたり、脳の構造的な特徴が関連していたりすることがあります。MRIで脳の「形」と「血管」を立体的に映し出すことで、あなたの頭痛がどのタイプ(一次性か二次性か)なのかを正確に判別し、最適な治療方針を立てることが可能になります。
3.「異常がない」という最大の治療
検査の結果、脳に重大な異常がないと分かることは、実は非常に重要な「治療」の一部です。「脳に異常はない」という確信が得られるだけで、病気への恐怖心やストレスが軽減され、それだけで頭痛の回数が減る患者様も少なくありません。
頭痛を「ただの体質」と諦めたり、大きな病気を怖がって放置したりせず、まずはMRI検査でご自身の脳の健康状態を確認してみませんか。その一歩が、痛みに振り回されない穏やかな日常を取り戻すための、確かな第一歩となります。